津軽三味線について

歴史・音楽的特性・楽器の選び方まで、津軽三味線のすべてをわかりやすく解説します

Word & Meaning

津軽三味線という言葉の5つの意味

「津軽三味線」は実に多義的な言葉です。整理すると大きく5種類に分類できます

楽器そのもの

構造上の違いを表す楽器名。楽器屋での「津軽民謡対応用三味線」のような使い方。

音楽ジャンル

秋田三味線・南部三味線・民謡三味線などと並ぶ、民謡のジャンル名としての使い方。

音楽表現・スタイル

津軽らしい音を表現するための演奏方法・テクニック・表現方法の総称。

演奏家を指す

複数の奏者が混在する場面で人を省略して使う言葉(例:「津軽三味線が来た」)。

「三味線」と省略

津軽地方では「三味線」といえば津軽三味線のことを指し、「津軽」が省略される。

有名な言葉「人まねでない三味線を弾け」(仁太坊)の「三味線」は、演奏表現のことを意味しています。

Music Genre

音楽ジャンルとしての津軽三味線

ソロでも聴衆の心を掴んで離さない、即興演奏の音楽

津軽三味線は、日本の青森県・津軽地方に生まれた三味線音楽です。元来、民謡の世界には「三味線は唄なり」という言葉があり、三味線は唄の音程とテンポを忠実に、唄を引き立てるように伴奏するのが良いとされてきました。

しかし津軽三味線は次第にこの枠から出て、独自の表現ができる楽器として確立していきます。ソロでも十分に聴衆の心を掴んで離さないパワーを持ち、これが他の民謡伴奏の三味線と大きく異なる点です。

もう一つの大きな特徴は、即興的な演奏に価値を置く点。この即興演奏こそが津軽三味線の命であり、自己表現への追求が多くの若者をこの世界へ引き付けています。

津軽三味線で自由に演奏される曲は主に「津軽五大民謡」と呼ばれる5曲(じょんから・あいや・よされ・小原・三下り)。ソロ演奏や前奏・間奏の部分で奏者が音階とリズムをもとに拡大解釈して演奏し、演奏者のオリジナリティーが強く問われます。

音楽的特性

リズム的要素が強く打楽器的。最も重要なのは音色(ねいろ)そのもので、奏者個人のオリジナリティーがよく現れます。使用音階は一般的に陽旋法がほとんどです。

History

津軽三味線の歴史・発祥

青森県北津軽郡金木町から始まった、今なお進化し続ける音楽

始祖

神原仁太坊(秋元仁太郎)

安政4年〜昭和3年。津軽三味線の始祖。青森県北津軽郡金木町にて現在のスタイルの基礎を確立した。

完成者

白川軍八郎

仁太坊の弟子。「津軽三味線の神様」と称され、津軽三味線という芸を完成させた人物。現在の奏者はほぼ全員がその影響を受けている。

進化中

今なお進化の途上

多くの伝統音楽が過去の曲の保存に存在価値を求める中、津軽三味線は即興性とオリジナリティーの追求により、今なお歴史が作られ続けている。

主な系譜

  • 神原仁太坊
  • 楠美喜一郎
  • 村上次郎一
  • 太田長作
  • 石沢竹太郎
  • 梅田豊月
  • 白川軍八郎
  • 高橋竹山
  • 木田林松栄
  • 福士政勝

※参考文献:「津軽三味線の歴史」大條和雄著・文芸津軽社発行

Schools

津軽三味線の流派

現在、有名で比較的大きな流派をご紹介します

小山流

小山貢を宗家とする流派。

澤田流 当教室

澤田勝秋を宗家とする流派。当教室が属する正統流派。

高橋流

高橋裕次郎を宗家とする流派。

藤田流

藤田淳一を宗家とする流派。

五錦流

五錦竜二を宗家とする流派。

※これ以降の若手名人達は流派と言えるような組織を持っていません

Instrument

津軽三味線の入手法と楽器の値段

楽器の音の基礎は皮張りしだい。信頼できる職人さん選びが大切です

三味線の音は皮張りと奏者の腕次第。高い楽器が必ずしも良い音ではありません。

楽器・部品 価格目安
練習用(入門)花梨材・合成皮革 4〜15万円
練習用(中級)花梨材・犬皮 8〜20万円
本格品 紅木(こうき)使用 25〜300万円
バチ(練習用・プラスチック系) 約3,000円〜
バチ(本格・べっこう)音色に直接影響 2〜50万円超
糸巻き(象牙)※ワシントン条約規制・在庫のみ 3本で15〜20万円

楽器店選びのポイント

  • プロ演奏家が通う店は皮張りの技術が高い
  • メンテナンスに対応できる店を選ぶ
  • ネット系店舗は一度訪問して確認を
  • 職人さんと長い信頼関係を築くことが理想

当教室は、レッスン室に楽器を常備しているので、入会時に楽器を購入する必要はありません。手ぶらで通えます。自宅練習用にはレンタル楽器もご用意しています。

Songs & References

代表的な唄・文献

津軽五大民謡

  • 津軽じょんから節 旧節・中節・新節
  • 津軽よされ節 旧節・新節
  • 津軽あいや節
  • 津軽おはら節 旧節・新節
  • 津軽三下り

参考文献(大條和雄著)

  • 絃魂 津軽三味線 合同出版 ¥1,800 ※絶版
  • 汝、なだば木田林松栄 ワープロ出版 ¥1,500
  • 津軽三味線のルーツを求めて 文芸津軽社 ¥1,030
  • 津軽三味線の歴史 文芸津軽社 ¥2,060
  • 津軽三味線の誕生 新曜社 ¥2,266
  • 津軽三味線と私 文芸津軽社

Notation

津軽三味線の記譜法

ギターのタブ譜に似た奏法譜で記すことができます

津軽三味線の譜面例

奏法譜(タブ譜)

津軽三味線はこのような譜に書くことができます。これはギターのタブ譜のようないわゆる奏法譜です。もちろん五線譜で記すことも可能です。

しかし三味線は、演奏するために必要な曲のキー毎にチューニングを変えて演奏することも多く、また他の楽器とのアンサンブルの頻度が低いので、五線譜より奏法譜の方が実用的かつ合理的です。

上記譜面の横の三本線は三味線の糸(絃)を表します。線上の数字は左手で押さえる場所で、演奏上では曲の中で演奏する音程を表します(三味線ではツボ・勘どころなどと言います)。

ローマ数字は指番号。Ⅰは人差し指、Ⅱは中指、Ⅲは薬指で、小指は伝統的演奏では使用しません。カタカナの「ハ」はハジキの記号(ギターのハンマリングオン+プリングオフに相当)、「ス」はスクイの記号(バチのアップストローク)です。

津軽三味線は即興性を身につけることを目標とする以上、譜面よりも音そのものに対する感覚を養う必要があり、上達の過程でむしろ譜面が邪魔をするようになります。ある時期から、感覚を養うためにあえて譜面を使わない時期は必要です。

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